洋服の物々交換が実現する未来のサステナファッション

Writer: Nagisa Wakamatsu

2022/5/30

「服の寿命を最大限に延ばす」をコンセプトに、洋服の物々交換イベントを行うRationaloop(ラショナループ)合同会社。リユース品や廃棄予定の新品を捨てずに循環させるため、代表の田村龍之介さんが2021年12月に起業しました。サステナモール内のオンラインショップ「with Abandoned clothes」では、コーディネートのセット販売を4月から開始。洋服の物々交換を始めたきっかけや大切にしている考え、セット販売の理由などを田村さんに伺いました。

プロフィール

田村龍之介
(たむら りゅうのすけ)

トレンドの最前線にあるアパレルブランドにて9年間勤務し、大量に服を作り大量に余らせるやり方の持続可能性に疑問を持ち、Rationaloop合同会社を創業。代表取締役社長として、洋服の物々交換会や、洋服再生プロジェクトを主催する。

洋服が好きだからこそ大量生産に疑問を感じた

——「洋服の物々交換」を始めたきっかけを教えてください。

田村さん(以下、田村):私は服飾の専門学校を卒業後、トレンドのファッションアイテムを扱うカジュアルブランドで9年間働きました。その上で感じたのは、「大量生産はいつまでも続かないのでは」ということです。洋服を生産する過程では、さまざまな環境負荷がかかります。例えば工場でのCO2排出、原料となる植物を栽培する時に使用する莫大な量の水、染色に使う化学物質による川や海の汚染などです。資源には限りがありますから、大量生産するファストファッションの環境問題が取り沙汰されるようにもなりました。

生産量を増やして余った洋服はセール品として販売しますが、それでも売れない場合は廃棄されてしまいます。それと、私が店舗マネージャーになってからはシーズンごとに新作を購入してそれを着ていたので、あっという間に家の中が洋服であふれかえってしまったんです。

廃棄を出さずに循環させるにはどうしたらいいかを考えた時、着ない服を持ち込んで気に入った服を持ち帰ってもらう「物々交換」が一番いいのではないかと思い付きました。リサイクルではなくリユースなら資源を消費せず環境に優しいですし、若い人たちの間で古着のニーズが高まっていることから需要があると考えました。

——アイディアを実現させるために起業したんですね。

田村:もともと起業したいという夢があって友人たちにも話していたので、口だけにならないよう1回目のイベント日程を先に決めて会社も退職しました。最初は自分を逃げられない状況に追い込んで準備した感じですね。

——リユース品はどのように集めたのですか。

田村:まずは自分と知人の私物で700点弱集めたのですが、その時に、たくさんの洋服が家に眠っていることを改めて実感しました。

今までのイベント開催回数は6回です。1回目は祐天寺、2回目は高円寺、3回目は原宿にある洋服お直し工房・fenice closet(フェニーチェクローゼット)が「原宿洋服再生プロジェクト」という課外活動をしていたので、コラボレーションというかたちでサロンを使わせていただきました。その後は原宿のキャットストリート沿いにあるHIBICA神宮前を会場にしていますが、こちらでの開催は5月20~22日のイベントをもって終了となります。6月以降は別の会場で開催する予定です。

カラーでまとめているため、探しやすい・見やすく工夫されている

——開催場所に対するこだわりはあるのですか。

田村:原宿は古着屋が多くて強いニーズがありますし、アクセスが良いので神奈川、埼玉、千葉など東京近郊の人も来やすいと思って選びました。ですが、次は茨城、栃木、群馬などの関東圏で開催したいと思っています。洋服を捨てずに循環させるイベントがあるということを日本全国に広めて、廃棄を少なくしていきたいと考えています。

——参加者の感想はどんなものがありましたか。

田村:イベントの特徴の一つとして、持ち込んでいただいた洋服はすぐ店頭に出すので、「自分が持ってきた服を持ち帰る人の姿を目の当たりにして、すごくうれしかった」という感想がありました。「ちゃんとリユースされているとわかるから安心して洋服を持ち込める」というお言葉もいただきましたね。あとは、インスタでメンションして「すごく楽しかった」「おしゃれなイベントだった」と感想をストーリーであげてくれる人もいます。うれしいですね。

 

チケット代が2,000円と比較的安く、さまざまな系統のアイテムが置かれているので、普段は着ないタイプのものを持ち帰るという人も多いです。古着にはそういう楽しさもありますよね。

——イベントで工夫していることはありますか。

田村:最近はユニセックスな着こなしをする人が増えているので、メンズとレディースのアイテムを分けずに出しています。きれいで見やすくなるよう色ごとに展開するなどの工夫をしていますね。ほかには、「楽しい」というのも大事にしているので、ご来場いただいたお客様となるべくコミュニケーションを取るようにしています。持ち込まれた洋服をすぐ店頭に出すから、常に商品が変化しているのも工夫の一つです。

子ども服も物々交換の対象

洋服のブランドよりも理念を大切にしたい

——サステナモール内のオンラインショップでは、コーディネートのセット販売をしています。なぜですか?

田村:リユース品以外にも廃棄予定だった新品を仕入れたりしているので、中には万人受けしないデザインのものもあります。リユース品、新品に関わらず、そういったアイテムを捨てずに延命させるには、「かっこいい」や「かわいい」などと感じてもらえるコーディネートを組めばいいのではと考えました。

——誰がコーディネートしているのですか。

田村:モデルが自分の着る服を選んでいます。撮影場所の隅にブルーシートを敷いて、必ず使ってほしい稼働していない洋服と、それに合いそうな洋服を置いて、その中からコーディネートしてもらいます。モデルにも楽しんでもらえたらいいなと思って。

オンラインショップは4月に始めたばかりなので、認知度をどのように上げていくかを試行錯誤している段階です。洋服のブランドネームを出して売り上げにつなげる方法もありますが、弊社ではあえて出さないようにしています。

——それはなぜですか。

田村:「ブランドものだからほしい」というのではなく、弊社がやっていることに共感していただきたいからです。例えば、イベントのチケット代2000円でハイブランドの洋服を持ち帰れるなら誰でも来ますよね。そして、いつも同じものが余ってしまう。弊社は、洋服を循環させることで廃棄削減を目指しています。ただ売れればいいとは考えていないんです。

Rationaloop合同会社代表取締役の田村さん

不要になった洋服の行き先を考えてほしい

——洋服の物々交換以外の活動があれば教えてください。

田村:大阪のバッグメーカー「AMARIO」の販促をしています。そのつながりで廃棄予定のバッグを提供していただき、イベントにも出しています。あとは、私の仕事の相方も元々アパレル業界にいたので、そのつながりでメーカーから使わなくなった生地を丸々4本いただきました。何かに活用できないかと現在考えているところです。

——今後やってみたいことはありますか。

田村:まずはイベントを日本全国に広げていきたいです。そして、ゆくゆくは無人の店舗を持てたらいいなと思っています。100%無人は難しいと思いますが、チケット制で会計の必要がないのでQRコードを読み込んで入場していただくとか。スタッフは持ち込まれた商品を並べるだけというイメージですね。二人で活動しているから時間はかかると思いますが、リユースのアパレル代表と言われるくらいになりたいと思っています。

——最後に読者へメッセージをお願いします。

田村:生きている人はみんな洋服を着ます。ですから、おしゃれを楽しむだけでなく、洋服の寿命を延ばすにはどうしたらいいかを一人ひとりが考える社会になってほしいと思います。最近は「エシカル」や「サステナブル」などの概念が広まっていますが、義務的になるのではなく、「楽しいことをしていたら実践していた」というくらい当たり前の感じになっていってほしいです。

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